東京が招致に名乗りを上げたときから、私はオリンピック開催には反対だった。けれど、では始まっても観戦しないか、と問われれば、女子サッカーを始めとして、見ずにはいられない競技がある、と答える。心の中は引き裂かれて矛盾している。
ほしの・ともゆき 1965年生まれ。「ファンタジスタ」(野間文芸新人賞)で少数派を潰す社会と対峙(たいじ)する女子サッカー選手を描く。著書に「だまされ屋さん」など。
モントリオール五輪を小学時代に見て以来、私はオリンピックにいつも心ときめかせてきた。今サッカーや相撲のファンであるのも、オリンピックでスポーツを見ることの喜びを知ったからだ。
それなのに、十数年前ぐらいから、次第に嫌気が差してきた。なぜなのか、今回のオリンピック・パラリンピック組織委員会・森喜朗前会長の女性差別発言と、それをめぐる社会の状況を見て、得心がいった。
一言でいえば、オリンピックは選手のためでも見る人のためでも開催地の住民のためでもなく、主催する関係者のごく一部の人の利権が何よりも最優先されるということが、ごまかしようのないほどはっきりしたからだ。
問題となった、2月3日の日本…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル